大判例

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東京高等裁判所 昭和43年(ラ)940号 決定

本件記録に綴られた第一号証(仮処分決定正本)、第二号証(不動産仮処分調書)および第三号証(点検調書謄本)によれば、申立外立石武敏は昭和四二年四月六日抗告人を債務者として原決定添付目録記載の土地(以下本件土地という)について東京地方裁判所に仮処分の申請をし、同日「債務者(抗告人)の本件土地に対する占有を解いて、東京地方裁判所執行官に保管させる。執行官は、債務者にその使用を許さなければならない。ただし、この場合においては、執行官は、その保管に係ることを公示するため、適当な方法をとるべく、債務者は、この占有を他人に移転し、または、占有名義を変更してはならない。」旨の仮処分命令を得て、同月一四日右仮処分命令の執行をし、執行官は本件土地につき抗告人の占有を解いて執行官の保管に移したうえ、抗告人にその使用を許した。ところがその後昭和四三年一一月一三日執行官が点検したところ、本件土地の中央より東南寄りの所にネオフレン転回式五屯クレーンを同年九月頃建設して使用している現況であるので、執行官はこれを前記仮処分命令に違反する行為と認めて、抗告人においてただちにこれを撤去すべき旨の本件勧告をしたことが認定される。

抗告人は執行官の本件勧告は実質において撤去命令と見るべく、従つて執行の一種ないし執行に準ずる処分と解するのが妥当である旨主張する。ところで前記認定事実の場合のごとく、執行官の点検執行に際し、債務者が機械等の工作物の設置によつて客観的現状に変更を加えた場合においても執行官は執行機関として工作物を除却取毀等の方法により排除し得る権限はないものと解すべきである。本件の場合、抗告人主張のように従前のクレーンが倒壊したため、これに代わるものとして前記クレーンを設置したにすぎず、その撤去も比較的容易なものであるとすれば、執行官が点検の際右クレーンの撤去を勧告したことの当否は問題であるけれども、抗告人が右勧告に従わなかつたとしても、執行官はさらに撤去命令、撤去行為等の実力手段にでることはできないものといわざるを得ない。

本件勧告の当否は右のように問題ではあるが、いずれにせよそれは執行官が将来クレーン撤去の実力行為に出るための予備ないし準備の措置ではなくて、あくまでも抗告人に対して任意の撤去をうながすだけの文字どおり法的効力を伴わない説得行為として行つたものであり、単なる勧奨であると見るほかはなく、従つて執行官の執行処分ないしこれに付随する処分とはいえず、民事訴訟法第五四四条の執行の方法に関する異議の対象となり得ないものといわなければならない。

(多田 上野 岡垣)

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